夜香花
闇に包まれた里の一角で、深成は茂みの中に身を隠して、真砂の家を睨んでいた。
まだ真夜中ではない。
宵の口、といった時刻だ。
大抵の者は、皆が寝静まる夜更けに襲いかかるだろうが、戦慣れした者ほど、夜が更けるにつれて警戒心も強まるはずだ。
故に、まだ皆が寝静まるほどの夜更けでない、この時刻を狙ったのだ。
だが。
---千代……。今日も真砂と一緒にいるのか……---
深成は夕暮れからずっと、ここで真砂の家を見張っていたのだが、少し前に、千代が家に入ったのだ。
---下手に千代がいたら、千代まで巻き込みそう---
真砂を狙えば、千代は真砂を守ろうとするだろうし、そうでなくても真砂が千代を盾に使うかもしれない。
千代自身が向かってきたならともかく、愛する真砂に盾にされるのは堪らないだろう。
---それとも、盾でも一応真砂に必要とされたわけだから、それで死んでも千代は嬉しいのかな---
千代の、真砂を想う気持ちは並みではない。
真砂のためなら、惜しげなく命も捨てそうだ。
---わらわの敵は、あくまで真砂一人だもん。無関係な千代を巻き込むことは出来ない---
千代が向かってきても、逃げることは可能だろう。
だがそうなると、真砂に集中できない。
ただでさえ、真砂は強いのだ。
深成だって、真砂に向かう以上、命を捨てる覚悟だ。
それでも勝てる率は非情に低い。
せめて相応の傷でも負わせられれば天晴れ、といった捨て身の攻撃なのに、他の者に気を取られたくない。
出てきてくれないかと、じりじりしながら、深成は真砂の家の戸口を睨み続けた。
まだ真夜中ではない。
宵の口、といった時刻だ。
大抵の者は、皆が寝静まる夜更けに襲いかかるだろうが、戦慣れした者ほど、夜が更けるにつれて警戒心も強まるはずだ。
故に、まだ皆が寝静まるほどの夜更けでない、この時刻を狙ったのだ。
だが。
---千代……。今日も真砂と一緒にいるのか……---
深成は夕暮れからずっと、ここで真砂の家を見張っていたのだが、少し前に、千代が家に入ったのだ。
---下手に千代がいたら、千代まで巻き込みそう---
真砂を狙えば、千代は真砂を守ろうとするだろうし、そうでなくても真砂が千代を盾に使うかもしれない。
千代自身が向かってきたならともかく、愛する真砂に盾にされるのは堪らないだろう。
---それとも、盾でも一応真砂に必要とされたわけだから、それで死んでも千代は嬉しいのかな---
千代の、真砂を想う気持ちは並みではない。
真砂のためなら、惜しげなく命も捨てそうだ。
---わらわの敵は、あくまで真砂一人だもん。無関係な千代を巻き込むことは出来ない---
千代が向かってきても、逃げることは可能だろう。
だがそうなると、真砂に集中できない。
ただでさえ、真砂は強いのだ。
深成だって、真砂に向かう以上、命を捨てる覚悟だ。
それでも勝てる率は非情に低い。
せめて相応の傷でも負わせられれば天晴れ、といった捨て身の攻撃なのに、他の者に気を取られたくない。
出てきてくれないかと、じりじりしながら、深成は真砂の家の戸口を睨み続けた。