夜香花
「真田の忍びか……。お前の動きを見れば、奴らはお前の正体を知ろう」

「真田?」

「お前の父親だ。大谷の娘が、真田の次男に嫁いでいる。そこに産まれたのがお前だ」

 あんぐりと口を開けて、深成は真砂を凝視する。
 真田といえば、深成ですら耳にしたことのあるほどの、有名な大名だ。

「うっそ……」

「だといいがな」

 いきなり言われた深成の驚きはもっともだが、真砂は考えられること全てを調べて出した結論だ。
 しかも、そうであれば、深成の存在に納得がいく。

「真田の次男は、徳川と折り合いが悪い。早くからこうなることを見越していれば、東軍側に間者を放つことぐらいしよう。もちろん、ちゃんとした間者も放っただろうが、お前を細川に入れたのも、その一環か。お前の場合は、お前の身を案じていた部分もあろうがな」

 真田には、優秀な忍びが多数いる。
 中でも次男に仕える忍びには、十人の抜きん出た者がいるらしい。
 そのような者があれば、わざわざこのような子供を使うこともないはずだが。

「大谷の殿様は、初め東軍に靡きそうだった。西軍の大将との友情を裏切れずに、結局西軍に与したが、ぎりぎりまでどちらに付くか決めかねていたんだろう。注意深く東軍の動きを長く探るために、細川に目を付けたのか。あそこは女だらけの屋敷だ。子供であれば、容易く入れよう。それにお前を抜擢したのは、おそらく真田の家臣の忍びについて修行していたからだろう」
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