夜香花
 それよりも、と、真砂は深成を真っ直ぐに見た。

「お前が何故真田の屋敷を出されたのかよりも、俺が今気になるのは、今現在の、お前の存在だ」

「?」

「真田の一族は、親兄弟が東軍・西軍に分かれて戦った。お前の父親は西軍だ。さっきから言っているように、西軍は負けた。負けた武将はどうなるか、考えるまでもないだろ」

 名のある武将ほど、負けたら生きてはいられない。
 まず間違いなく、死罪は免れない。

「ただでさえ、真田信繁は徳川に恐れられている。何度も戦を仕掛けられ、命からがら逃げたこともあるぐらいだ。そんな恐ろしい敵を殲滅できる、今はまたとない機会なんだ。信繁も恐ろしいが、その手足となる十勇士だって、同じぐらいの脅威だろう。信繁の傍近くに仕え、常にその身を守ってきた手練れ中の手練れだ。信繁よりも厄介と見ていい。それらにまつわること全て、東軍は躍起になってあぶり出すだろう」

「殿様を死罪にしただけじゃ、おさまらないの?」

「おさまらんのじゃないか? 強力な部下がいれば、殿様を罰したらそれこそ恨みを買って、返っておさまりがきかなくなる。だから一族を根絶やしにしたり、家を潰したりするんだろ」

「真田のお家も、そうなるの?」
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