夜香花
「己で相手を選ぶなんてこと、端からしないんだろうしなぁ」

「い~や~だ~。知らない人のところにいきなり嫁ぐなんてことも嫌だし、わらわにだって、好みってものがあるんだから~」

「馬鹿か。好みかどうかなんて、構ってられるかよ。そんなこと言ってると、お前は乱破にもなれないぞ」

「何でさっ」

「乱破の女は女技を使う。前にも言ったろ。乱破の女の女技は、当たり前のことだ。そのときに、相手なんか選んでられるか」

「あ、あんたは男だから、何とも思わないんだよっ! 好きでもない男とそんなこと、出来るもんじゃないんだからっ」

「わかったような口を利くなぁ。経験もないくせに」

 ちょっと呆れたように、真砂が言う。
 深成は泣き喚く勢いで、ばんばんと床を叩いた。

「わらわは無理~。そんな恥ずかしいこと、何とも思ってない人となんか出来ない~」

「恥ずかしい……」

 首を捻る真砂の前で、深成は床に突っ伏した。
 おいおいと泣き喚く。

「……お前の言うことは、よくわからんが。だったらせいぜい、隠れておくことだ。先にも言ったが、お前の存在は危険極まりない。てめぇの血を自覚して、妙な動きはしないことだな」

 そう言って、真砂はごろりと横になった。
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