夜香花
 曲者は、清五郎の刀を力任せに弾くと、大きく後ろに飛んで距離を取ろうとした。
 が、清五郎は一気に踏み出し、開いた距離を詰める。
 同時に刀を横に薙いだ。

 確かな手応えが、清五郎の刀から伝わる。
 曲者は、がくりと膝を付いた。

 素早く、清五郎は膝を付いた曲者の後ろに回り、片足の腱を斬り裂く。
 その上で、短刀の柄を曲者の口に押し込んだ。
 舌を噛み切るのを防ぐためだ。

 手際良く両手を拘束すると、清五郎は曲者の首根っこを掴んで、引き摺るように里に向かった。

 片足の腱を斬られているので、曲者は足を引きずりつつついてくる。
 それに、少し違和感を覚えたが、とりあえずは生かして捕らえたこの者に聞けば全てわかろうと、清五郎は里の中央の広場に歩いていった。
< 339 / 544 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop