夜香花
第二十七章
 夜明け、まだ日の昇りきっていない薄闇の中を、真砂は深成を引き連れて、広場に向かった。

「ううう~~~。何でこんな早くに出かけるのさ~。昨日も夜中に起こされたってのに、目が開かないよぅ~」

 真砂に腕を引っ張られた深成が、ぶつぶつと文句を言いながら、ふらふらとついてくる。

「もう駄目っ! 眠い!」

 叫ぶなり、深成はべたっとその場にへたり込み、蹲った。

「おい」

 真砂が腕を引くが、深成は頑として動かない。
 丸まったまま、寝に入ろうとする。

「信じられない奴だな。歩いてる途中で寝る奴があるか」

 ぐいぐいと腕を引っ張ってみるが、深成はやはり動かない。

「おい、起きろ」

「無理」

 その場に倒れたまま動かない深成に業を煮やし、真砂は思いきり腕を引っ張ると、深成の身体を担ぎ上げた。

「痛い~」

 抱き上げたわけではない。
 荷物のように、肩に担ぎ上げたのだ。
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