夜香花
「ねぇ。あの人、あんな格好でどうすんのさ」

 夜もとっぷりと深まった家の中で、深成は食後のおやつに焼いた芋を頬張りながら、真砂に聞いた。
 真砂はさっきから、刀の手入れを終えたと思ったら苦無をまとめたり、何か落ち着かない。

「こんな夜にそんなものまとめて、どうすんの。そんなことより、あんたも早くご飯食べなよ。わらわ、おやつまで食べ終えちゃう」

 真砂は渋い顔で深成を見た。
 人の作った物には手を付けない真砂なので、食事はいつもそれぞれが作っている。
 真砂の作ったものを深成が貰えばいいといえばそうなのだが、真砂がわざわざ二人分も用意するはずもなく、一人一人が自分の分だけを作るという、何とも効率の悪い事態に陥っている。
 それでも深成は何となく、真砂が食べている間に自分が何もしていないのは落ち着かなく、大抵は同じときに食べるようにしているのだ。

「だから何だよ。ったく、ほんとに遠慮のない奴だな。そろそろ芋もなくなるじゃないか」

 そんな深成の気遣いも気にせず、真砂は悪態をつくと、まとめた苦無と刀を傍に置いた。
 そしてそのまま、ごろりと横になる。

「ちょっと、寝るの? ご飯は?」

 慌てて深成が、真砂に這い寄る。

「俺は干飯(ほしいい)を食った」

「いつの間にーっ」
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