夜香花
「本当だな。……犯(や)るか?」

「そうだなぁ」

 こういう戦の蛮行は当たり前だ。
 戦で気の昂ぶった男たちは、紳士的になど振る舞わない。
 人を斬れば斬るほど高まった興奮を、そのまま女子にぶつけるのだ。

「ぶっ無礼者!」

 女は気丈に二人を睨み付ける。
 さすが、その辺の女子などより、よっぽど威厳がある。
 だがこういう場合、威厳があればあるほど、男の欲望も燃えさかるというものだ。

 ただ、女にとって幸いだったのは、このとき外が騒がしくなったことだ。
 門が破られ、敵がなだれ込んだらしい。

 真砂が舌打ちした。

「戦が始まったか」

 敵は、この女を生かして連れ去りたいだろうが、真砂は殺すのが目的だ。
 しかも、一般的には己の仕業とわからないほうがいい。

「残念。悠長に犯してる時間はねぇな」

 そう言って、真砂は室の着物の合わせを掴むと、乱暴に押し広げた。
 懐にあった守り刀を掴む。

「最後に目だけでも、楽しませてもらおうか」

 言うなり真砂は、守り刀で彼女の帯を斬り裂いた。
 ばさ、と帯が落ち、着物が乱れる。
 合わせが開き、白い肌が露わになった。
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