夜香花
ぽかんと、真砂は深成を見つめた。
傍にいれば安心などと、今まで言われたことはない。
むしろ傍にいたほうが危ないだろう。
真砂にとって、戦闘中に傍にあるものは、盾でしかないのだ。
里の者も、皆それを心得ている。
不意に深成が、きゃはは、と笑い声を上げた。
「何か今日は、新鮮な発見がいっぱいだぁ。そんな阿呆面の真砂も、初めて見た」
さもおかしそうに、深成は、きゃきゃきゃ、と笑い転げる。
清五郎や捨吉がいたら、瞬時に空気が氷結するだろう。
この真砂に向かって、阿呆とは。
「真砂もさぁ、そんな表情も出来るんじゃん。いっつも何考えてんだかわかんない無表情で、つーんとしてないでさ、さっきみたいに笑ってみれば? 折角見かけが良いのに、勿体ないよ? 無理してるんじゃないの? 疲れてるから、今日なんてぐっすり寝てたんじゃないの?」
鮎の刺さっていた串を振りながら言う深成に、真砂は眉間に皺を寄せた。
確かに今朝のことは、自分とも思えない失態だ。
疲れているとか、そういうことではない。
疲れていようが、あってはならないことなのだ。
そもそもそんなに『疲れる』こと自体が、あり得ない。
乱破がへとへとになるなど、それこそあってはならないことだ。
「ほらほら、またそんな顔して。お腹が満たされたら、それだけで幸せな気分になるでしょ。そんなむっつりしないのっ」
いきなり深成が傍に来て、真砂の頬を両側から引っ張った。
さすがにこれには、真砂も手を振って、深成の手を、ぺしっと払った。
傍にいれば安心などと、今まで言われたことはない。
むしろ傍にいたほうが危ないだろう。
真砂にとって、戦闘中に傍にあるものは、盾でしかないのだ。
里の者も、皆それを心得ている。
不意に深成が、きゃはは、と笑い声を上げた。
「何か今日は、新鮮な発見がいっぱいだぁ。そんな阿呆面の真砂も、初めて見た」
さもおかしそうに、深成は、きゃきゃきゃ、と笑い転げる。
清五郎や捨吉がいたら、瞬時に空気が氷結するだろう。
この真砂に向かって、阿呆とは。
「真砂もさぁ、そんな表情も出来るんじゃん。いっつも何考えてんだかわかんない無表情で、つーんとしてないでさ、さっきみたいに笑ってみれば? 折角見かけが良いのに、勿体ないよ? 無理してるんじゃないの? 疲れてるから、今日なんてぐっすり寝てたんじゃないの?」
鮎の刺さっていた串を振りながら言う深成に、真砂は眉間に皺を寄せた。
確かに今朝のことは、自分とも思えない失態だ。
疲れているとか、そういうことではない。
疲れていようが、あってはならないことなのだ。
そもそもそんなに『疲れる』こと自体が、あり得ない。
乱破がへとへとになるなど、それこそあってはならないことだ。
「ほらほら、またそんな顔して。お腹が満たされたら、それだけで幸せな気分になるでしょ。そんなむっつりしないのっ」
いきなり深成が傍に来て、真砂の頬を両側から引っ張った。
さすがにこれには、真砂も手を振って、深成の手を、ぺしっと払った。