夜香花
「それでもわらわは、平気だけどね~」

 べろんと舌を出して笑う深成に、真砂は、ふぅ、と息をついた。

「俺が今までになく疲れてるとしたら、精神的にだな」

「何よ、それ」

「お前のような阿呆の相手を長々したことがないから、精神が今までになく参ってるんだ」

「またそういうことを……」

 深成がふくれっ面をして、真砂を睨む。
 そして、再び真砂の傍らに視線を移した。

「で、何で最近、何か警戒してるの?」

「最近?」

「最近よくさ、武器の手入れしてるじゃん」

「そうか? 大体敵が目の前にいるのに、武器の手入れを怠るなんて馬鹿な真似は、端からしないがな」

「敵?」

 きょとん、とする深成に、真砂は胡乱な目になった。
 しばらく待ってみても、ますます深成は首を傾げるばかりだ。
 真砂は大きくため息をついて、頭を抱えた。

「……お前は何故ここにいる。仇討ちだろうが」
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