夜香花
「この鬼畜ーーっ!」

 まつが叫び、真砂に掴みかかった。
 が、真砂は振り向き様、回し蹴りを、まつに見舞う。
 まだ幼い女子だろうと容赦ない蹴りに、まつは少し血を吐きながら吹っ飛んだ。

「まつ!」

 室が、倒れたまつの元へ行こうとするのを、清五郎が後ろから羽交い締めにした。

「う~ん、残念だな。こんな上玉を目の前にして、何も出来ないとは」

 名残惜しそうに後ろから胸を触りながら、清五郎がぶつぶつ言う。
 真砂はちらりと屋根を見上げた。

「犯るぐらいの余裕はあるかと思ったがな。きな臭くなってきた。爆薬に火が点いたようだな」

 真砂の言葉に、室は、はっと顔を上げた。
 慌てたように、部屋を見回す。

「そ、そなた! 秀清は? 秀清を知らぬか?」

 千代に向かって言うが、千代だって、そもそも真砂の配下である。
 しかも、秀清という人物自体知らない。
 少し遠くで、どぉん、と爆発音がした。

「ああ……早くせぬと。秀清、どこに行ったのじゃ。このままでは、わたくしは敵の手に落ちようぞ」

 必死で家臣を捜していた室の目が、ふと部屋の入り口へと向いた。
 身体を半ば部屋に入れた格好で倒れている武将に気づく。
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