夜香花
第二十九章
「あれか」
切り立った断崖の上から、崖下を見る。
件(くだん)の死体は、崖の途中の木に引っかかっているようだ。
妙な格好でぶら下がっていた。
崖は急だが、そう大きくもない。
もちろん落ちれば死ぬだろうが、目も眩むほどの高さではない。
その途中で死んでいる、ということは、殺されて落とされたということだ。
「確かに、同じ忍び装束のようだな。印までは確かめられんが、奴の仲間、ということだろうな」
崖の淵から死体を覗き込みながら、真砂が言う。
「真砂っ。あんまり乗り出しちゃ、危ないよ」
深成が、握った真砂の袖を引っ張りながら言った。
羽月が一瞬で顔色を変え、口を開こうとしたが、それよりも先に、真砂の眉間に皺が寄る。
「何を言ってるんだか。今だって、またとない機会だろうが」
「何のよ。とにかく、見てるほうが怖いっていうのっ」
首を傾げながらも、真砂の袖を引っ張り続ける深成に、真砂はため息をつくと、身体を戻した。
そして、ひょいと深成の襟首を持つ。
「ほれ」
ぱし、と足を払われた瞬間、深成の身体は空中へ。
真砂の腕一本で、崖の上からぶら下げられていた。
切り立った断崖の上から、崖下を見る。
件(くだん)の死体は、崖の途中の木に引っかかっているようだ。
妙な格好でぶら下がっていた。
崖は急だが、そう大きくもない。
もちろん落ちれば死ぬだろうが、目も眩むほどの高さではない。
その途中で死んでいる、ということは、殺されて落とされたということだ。
「確かに、同じ忍び装束のようだな。印までは確かめられんが、奴の仲間、ということだろうな」
崖の淵から死体を覗き込みながら、真砂が言う。
「真砂っ。あんまり乗り出しちゃ、危ないよ」
深成が、握った真砂の袖を引っ張りながら言った。
羽月が一瞬で顔色を変え、口を開こうとしたが、それよりも先に、真砂の眉間に皺が寄る。
「何を言ってるんだか。今だって、またとない機会だろうが」
「何のよ。とにかく、見てるほうが怖いっていうのっ」
首を傾げながらも、真砂の袖を引っ張り続ける深成に、真砂はため息をつくと、身体を戻した。
そして、ひょいと深成の襟首を持つ。
「ほれ」
ぱし、と足を払われた瞬間、深成の身体は空中へ。
真砂の腕一本で、崖の上からぶら下げられていた。