夜香花
 が、少し行ったところで、深成の足は止まってしまう。

「どうした?」

「足が痛い」

 ふと見ると、擦りむいた膝の傷から、かなり出血している。
 小石でも刺さっているのか、ただ擦りむいただけではないようだ。

「しょうがないな。ほら」

 捨吉が後ろを向き、その場にしゃがんだ。

「負ぶってやるよ。早く乗んな」

 少し躊躇ったが、ちらりと前方の真砂の背中を見、深成はひょい、と捨吉の背に身体を預けた。

 このまま遠慮していたら、間違いなく置いて行かれる。
 すでに真砂とは、かなり距離が開いているのだ。
 捨吉だって急いでいるだろう。

「よし」

 軽々と深成を背負い、捨吉は小走りで真砂の後を追った。
 羽月は真砂と捨吉の間で、どうしたもんかと悩んでいたが、捨吉が深成を負ぶうのを不満げに見た後、同じように駆けだした。
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