夜香花
くく、と笑っていた清五郎だが、ふと恐ろしいことに気づき、顔を上げた。
「待てよ。とすると、あの忍びを殺したのは、姫の居所を、真田に伝えるのを防ぐためか。真田の家系が安定するのは困る奴らの仕業ってことか」
真砂が頷く。
「そしてさらに、そいつにこの里の情報が漏れた恐れがある」
広場中が、水を打ったような静けさに包まれた。
「……この里も、伊賀の二の舞になるのか」
ぽつりと、長老の一人が呟いた。
若い者はいまいちぴんと来ないようだが、それなりの歳の者には、それだけで今がどれほどの危機に陥っているかがわかるようだ。
この党は、有名でもない分、実力も知られていない。
見も知らない流れの忍びなど、目障り以外の何ものでもないだろう。
さらに主も持たない小さな党だ。
潰したところで、誰の怒りを買うわけでもない。
真田と繋がっている党だと認識されても、それはさらに状況を悪化させる要因でしかない。
真田の力を削げるのであれば、喜んでこの党も潰しにかかるだろう。
真田の姫君諸共、場合によっては脅威になりうる忍び一党を、一気に葬り去れる、またとない機会だ。
「頭領……。どうするのです」
皆を代表して、中の長老が真砂に問うた。
ようやく若者の間にも、事の重大さが理解されたようで、皆真剣な目で真砂を見る。
束の間、真砂は目を閉じた。
そこで初めて、袖に若干の重さを感じる。
深成がずっと、真砂の袖を握っているのだ。
「待てよ。とすると、あの忍びを殺したのは、姫の居所を、真田に伝えるのを防ぐためか。真田の家系が安定するのは困る奴らの仕業ってことか」
真砂が頷く。
「そしてさらに、そいつにこの里の情報が漏れた恐れがある」
広場中が、水を打ったような静けさに包まれた。
「……この里も、伊賀の二の舞になるのか」
ぽつりと、長老の一人が呟いた。
若い者はいまいちぴんと来ないようだが、それなりの歳の者には、それだけで今がどれほどの危機に陥っているかがわかるようだ。
この党は、有名でもない分、実力も知られていない。
見も知らない流れの忍びなど、目障り以外の何ものでもないだろう。
さらに主も持たない小さな党だ。
潰したところで、誰の怒りを買うわけでもない。
真田と繋がっている党だと認識されても、それはさらに状況を悪化させる要因でしかない。
真田の力を削げるのであれば、喜んでこの党も潰しにかかるだろう。
真田の姫君諸共、場合によっては脅威になりうる忍び一党を、一気に葬り去れる、またとない機会だ。
「頭領……。どうするのです」
皆を代表して、中の長老が真砂に問うた。
ようやく若者の間にも、事の重大さが理解されたようで、皆真剣な目で真砂を見る。
束の間、真砂は目を閉じた。
そこで初めて、袖に若干の重さを感じる。
深成がずっと、真砂の袖を握っているのだ。