夜香花
「やだっ! そんなん絶対やだって言ったじゃん! そんな目に遭うために大名の姫になんて、なりたくない!!」
「……なるとかじゃなくて、お前は元々そうなんだ。元の身分に戻るだけだろ」
見えないがな、と言う真砂の皮肉に突っかかることもなく、深成はまた、ぶんぶんと頭を振った。
「そこまで俺を殺すことに拘ってるとも思えんがなぁ」
むしろ最近は、そんな目的は忘れてしまったかのようだ。
そもそもこの小娘に、人を殺すなどということが出来るとも思えない。
そういう行為自体に、躊躇いが見える。
いくら凄い殺気を放って向かってきたって、最後の最後で躊躇いを見せているようでは、目的は遂げられない。
「ま、考えてみれば、俺一人の命だけじゃなく、里全体の壊滅を誘発したわけだから、お前の目的は最大限の成果をもって成された、とも言えるがな」
深成は一瞬、打たれたように固まった。
が、すぐに顔をしかめると、ぎゅっと目を閉じる。
我慢していたようだが、閉じた目からは涙が溢れた。
「何泣いてる。お前が初めっからそのつもりで、俺の懐に入ってきたのなら、大したもんだぜ。己の手は汚さず、最大の利を得る。見事じゃないか」
「わ、わらわが『草』だっての?」
偶然を装い、敵の懐深く入り込んで、その地そのものを壊滅に導く。
真砂の母親がやったことだ。
「……なるとかじゃなくて、お前は元々そうなんだ。元の身分に戻るだけだろ」
見えないがな、と言う真砂の皮肉に突っかかることもなく、深成はまた、ぶんぶんと頭を振った。
「そこまで俺を殺すことに拘ってるとも思えんがなぁ」
むしろ最近は、そんな目的は忘れてしまったかのようだ。
そもそもこの小娘に、人を殺すなどということが出来るとも思えない。
そういう行為自体に、躊躇いが見える。
いくら凄い殺気を放って向かってきたって、最後の最後で躊躇いを見せているようでは、目的は遂げられない。
「ま、考えてみれば、俺一人の命だけじゃなく、里全体の壊滅を誘発したわけだから、お前の目的は最大限の成果をもって成された、とも言えるがな」
深成は一瞬、打たれたように固まった。
が、すぐに顔をしかめると、ぎゅっと目を閉じる。
我慢していたようだが、閉じた目からは涙が溢れた。
「何泣いてる。お前が初めっからそのつもりで、俺の懐に入ってきたのなら、大したもんだぜ。己の手は汚さず、最大の利を得る。見事じゃないか」
「わ、わらわが『草』だっての?」
偶然を装い、敵の懐深く入り込んで、その地そのものを壊滅に導く。
真砂の母親がやったことだ。