夜香花
「そういえば、早く出ないと危ないな。室の死体を始末するためだとしたら、爆薬は、ここに沢山仕掛けてある可能性がある」

「おっと、そういえばそうだな」

 最早興味を失ったように、清五郎は足元に室を投げ飛ばした。
 千代が、さっと真砂に駆け寄る。

「真砂様。わたくし、ちゃんとお役に立ちましたでしょ? ご褒美をおねだりしても、よろしいですわよね」

「ああ。褒美が欲しけりゃ、あとはここから抜け出すことだ」

 腕に取り付く千代を払い、真砂は回廊から庭に降りた。
 煙の充満する敷地内を見回し、状況を見る。

「まだでかい爆発は起きてないようだな。この煙に紛れて、今のうちに出たほうがいいだろう」

「真砂。矢次郎が、北の木の上に控えている」

「わかった」

 矢次郎は、主に雇い主と乱破との伝達役だ。
 依頼は矢次郎から伝達用の鳥を通して、真砂らの元へと届く。
 仕事を終えると、真砂は矢次郎にその証明を渡す。
 その証明を持って、矢次郎は雇い主の元へと赴き、報酬を受け取ってくるのだ。
< 39 / 544 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop