夜香花
---やりやがったな---

 二人組のうち、一人が初めに投げたのは、火薬の詰まった袋だ。
 それを目掛けて、もう一人が火矢を放つ。
 投げられた相手の近くで、爆発が起こるというわけだ。

 投げられた小さな袋を過たず射抜くところといい、並みの者ではない。
 武者たちと共に、そういう芸当の出来る者もいるようだ。
 罠を斬ったのも、おそらくそういった者だろう。

 気づけば、あらゆるところで爆発音がしている。
 ただ斬り込んだだけでは不利だと考えたようだ。
 仲間が巻き込まれても構わず、どんどん爆発を起こしている。

 こうなると、武者たちは焦って逃げ腰になった。
 下手にこの里の者と戦っていては、そこを狙って火薬が飛んでくるのだ。

 元々忠義心などない、寄せ集めの兵だったのだろう。
 武者はこぞって、逃げ出そうとし始めた。

---武者は放っておいても、勝手に自滅するだろう---

 里から撤収してくれれば、そいつは放っておけばいい。
 うっかり皆の集合場所に向かう者だけ殺せばいい。

 さて、待ち合わせ場所に向かうか、と立ち上がった真砂は、ちらりと振り返った。
 少し先に行けば、中の長老の家だ。

「……」

 どうしたもんか、と逡巡する。
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