夜香花
「いっ……たたたた……」

 深成が、のそのそと身を起こした。
 そして膝を押さえる。

「……うっ……えっく」

 爆風で吹き飛ばされたときに、またどこかで打ったのか、深成の膝はすっかり血に染まっていた。
 よほど痛いらしく、深成はぼろぼろと涙を流しながら、傷を確かめた。

 真砂はそんな深成を、まじまじと見た。
 さっき深成が突き飛ばしてくれなかったら、真砂も爆発に巻き込まれていたかもしれない。

 ちらりと真砂は周りを見、まだ爆煙が辺りに立ち込めているのを確かめると、短く息をついて、深成の腕を引っ張った。

「とりあえず、こっちに来い」

 涙の溜まった目で真砂を見、こくりと頷きながら、深成はそろそろと真砂に近づいた。
 そして真砂と共に、その場から少し離れる。

 どうやら戦は、ほぼ終息に向かっているようだ。
 もう周りに、人の気配もない。

 一応よくよく周りを確かめてから、真砂は自分の片袖を引き千切った。
 そして深成の裾を広げると、足を掴んで顔を近づける。

「ちょーっ! ななな、何っ」

 慌てて深成は、真砂の頭を押さえつけた。
 が、真砂はそのまま、じろりと睨む。

「馬鹿、騒ぐな。まだ安心すんのは早い」

 そう言って深成の手を払うと、血を流す傷口に口を付けた。
 強く吸い、ぺっと吐き出す。
 その行為を何度か繰り返した後、先程裂いた袖で、ぎゅっと縛った。
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