夜香花
「……」

 真砂は少女をまじまじと見た。
 先の行動は、素人の、ましてこのような幼い女子にはあり得ない。

 が、忍びにも見えない。
 素人ではあるが、反射神経が常人より抜群に優れている、という感じだ。

 少女は燃える目で真砂を睨むと、再度突っ込んできた。
 真砂は地を蹴って、後ろへ飛ぶ。

 思った通り、少女は目標が不意に遠のいても、転がることなく足を踏み出し、距離を詰める。
 真砂は腰を落として、身体を開いた。
 少女は一気に真砂に向かって飛び込んでくる。

 が。

「ぎゃん」

 あと一歩で、懐剣ごと真砂に突っ込む、というところで、少女はすっ転んだ。
 やはり加速は、それなりに負担だったのだろう、足がもつれたらしい。
 急いで起き上がった少女だったが、額と膝を、思いっきり擦りむいている。
 さらに。

「!!」

 鼻血が、ぼたぼたと垂れた。
 よっぽど痛かったのだろう、少女は鼻血をきっかけに、盛大に泣き出した。

「うっ……わあぁぁぁん!」
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