夜香花
第三十一章
戦を切り抜けてしばらくしてから、雨が降り出した。
瞬く間に土砂降りになった雨の中を、深成は真砂を支えながら、懸命に歩いていた。
いかな真砂でも、腕一本斬り落とされて、何ともないわけはない。
止血をしただけで手当てはしていないし、血もそう簡単に止まるような傷ではないのだ。
相当な量の出血に、さらに雨に打たれ、さすがの真砂も最早足元もおぼつかない。
それを、深成が必死で支えているのだ。
深成にとっては、この雨は有り難かった。
多分もう敵はいないだろうが、万が一まだどこかに敵がいても、この激しい雨は視界を遮ってくれるし、物音もかき消してくれる。
真砂の右腕を肩に回し、深成はよろよろと、とにかく前に見える岩山に向かった。
ようやく岩山のすぐ麓まで辿り着き、どこか洞穴でもないかと捜してみたが、生憎そのようなものはない。
ばかりか、見事に岩だらけで、うっかりすると泥に足を取られて転びそうになる。
途方に暮れていると、力なく頭を垂れていた真砂が、のろのろと顔を上げた。
「この岩山を登っていけば、落ち合う場所だが……」
「ここ?」
深成が驚いて、目の前の岩山を見上げた。
切り立った大きな岩が重なった山肌は、登れるような代物ではない。
瞬く間に土砂降りになった雨の中を、深成は真砂を支えながら、懸命に歩いていた。
いかな真砂でも、腕一本斬り落とされて、何ともないわけはない。
止血をしただけで手当てはしていないし、血もそう簡単に止まるような傷ではないのだ。
相当な量の出血に、さらに雨に打たれ、さすがの真砂も最早足元もおぼつかない。
それを、深成が必死で支えているのだ。
深成にとっては、この雨は有り難かった。
多分もう敵はいないだろうが、万が一まだどこかに敵がいても、この激しい雨は視界を遮ってくれるし、物音もかき消してくれる。
真砂の右腕を肩に回し、深成はよろよろと、とにかく前に見える岩山に向かった。
ようやく岩山のすぐ麓まで辿り着き、どこか洞穴でもないかと捜してみたが、生憎そのようなものはない。
ばかりか、見事に岩だらけで、うっかりすると泥に足を取られて転びそうになる。
途方に暮れていると、力なく頭を垂れていた真砂が、のろのろと顔を上げた。
「この岩山を登っていけば、落ち合う場所だが……」
「ここ?」
深成が驚いて、目の前の岩山を見上げた。
切り立った大きな岩が重なった山肌は、登れるような代物ではない。