夜香花
「岩と岩の間と、蔦葛(つたかずら)を使えば登れるはずだ。乱破ならな」
そう言って息をつき、真砂は、とん、と深成を押した。
支えがなくなり、真砂はふらりと傍の木に寄りかかる。
立っているのも辛そうだ。
血が流れすぎて、顔色もなくなっている。
「お前なら、登れるだろう」
軽く顎で岩山を指す。
深成は岩山に近づき、まじまじと注意深く、そそり立つ山肌を見上げた。
岩と岩の間を見ても、足場のようなものは見あたらないし、丁度良いところに蔦葛が垂れているわけでもない。
それでも乱破なら登れるのだろう。
だが、深成は真砂の元に駆け寄った。
「方法がわかったって、それは両手が使えてのことじゃん」
いかに優れた乱破だって、片手でこの岩山を登ることなど不可能だ。
真砂は当たり前だというように、小さく頷く。
「だから、お前なら登れると言うんだ」
「あんたはどうすんのさっ」
「どうするもない。この腕では、どうやっても上には行けないさ」
さっさと行け、というように、うるさそうに、しっしっと手を振る真砂に、深成は詰め寄った。
「あんたを捨てて、わらわ一人で行けって言うの!」
そう言って息をつき、真砂は、とん、と深成を押した。
支えがなくなり、真砂はふらりと傍の木に寄りかかる。
立っているのも辛そうだ。
血が流れすぎて、顔色もなくなっている。
「お前なら、登れるだろう」
軽く顎で岩山を指す。
深成は岩山に近づき、まじまじと注意深く、そそり立つ山肌を見上げた。
岩と岩の間を見ても、足場のようなものは見あたらないし、丁度良いところに蔦葛が垂れているわけでもない。
それでも乱破なら登れるのだろう。
だが、深成は真砂の元に駆け寄った。
「方法がわかったって、それは両手が使えてのことじゃん」
いかに優れた乱破だって、片手でこの岩山を登ることなど不可能だ。
真砂は当たり前だというように、小さく頷く。
「だから、お前なら登れると言うんだ」
「あんたはどうすんのさっ」
「どうするもない。この腕では、どうやっても上には行けないさ」
さっさと行け、というように、うるさそうに、しっしっと手を振る真砂に、深成は詰め寄った。
「あんたを捨てて、わらわ一人で行けって言うの!」