夜香花
 洞穴の中で、深成は溜まった枯れ葉をかき集めていた。
 ここも何かのときの避難場所なのだろう。
 奥に木箱があり、中に筵や薪などが備えてあった。

 真砂は隅に座り、立てた片膝に額を乗せて項垂れている。

「曲者を捕まえてから、そう間を置かず襲撃があったお陰で、結構な被害を出してしまいました」

 火を熾しながら、白い布を運んできた捨吉が報告する。

「まだ俺も、状況を把握しきれてませんが。ざっと見たところ、西の長老や弥平さんがいないようでした。里の西側の者らの被害が大きいようですね」

「……そうか」

 だるそうに顔を上げ、真砂はぱちぱち燃える火を見つめた。
 そして腰から苦無を抜くと、持ち手に布を巻いて、火に翳す。

「捨吉。手頃な木切れか何かはあるか?」

 苦無を熱しながら言う真砂に、捨吉は、びくっと身体を強張らせた。
 だがそそくさと、急いで辺りを捜す。

 どうしたのだろうと、枯れ葉を火に足しながら、深成も火にあたるべく、真砂に近づいた。

 やがて捨吉が、片手で握れるほどの木切れに、布を巻いて真砂に差し出した。

「どうすんの、そんなの」

 きょとん、と見る深成に、捨吉は、堅い表情を見せた。
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