夜香花
「こら。お前がそこに寝てどうするんだよ」

 ちょっと呆れて言う捨吉だったが、深成は筵から出ず、目を擦りながら、ちょい、と捨吉を指差した。

「違うもん。あんちゃん、ちょっとあっち向いてて」

「何?」

「いいから」

 深成に言われ、捨吉が顔を背けているうちに、深成は、ささっと単を引き寄せた。
 そして、単を着てから、やっと筵から這い出す。

「お芋とお米か。じゃ芋粥でもしようかね」

 捨吉の手元を確かめ、深成は焚き火の状態を見た。

「あんちゃん、火付けてくれない? わらわ、なかなか火、付けられないんだよ」

 昨日と同じように枯れ葉を集め、薪をくべながら深成が言う。
 捨吉は腰に挟んでいた火口を引っ張り出し、切り火を切った。
 深成は器用に薪を組み、その上に器を置いて、米と水を入れる。
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