夜香花
「派手にやったもんだ。屋敷の家臣は皆道連れか」

「お方様は、そんなお人ではない!」

 真砂の言葉に被る勢いで甲高い声がし、何かが飛んできた。
 咄嗟に脇差しで弾いたが、同時に起こった爆発の揺れで体勢が崩れ、弾いた懐剣が、真砂の腕を掠めた。

 真砂は僅かに目を見張った。
 下から、少女が燃える目で睨んでいる。
 先程の懐剣は、少女が放ったのだ。

「……何故そんなことが言える。そもそも己の始末も、家臣につけさせようとしていた女だ。真に家臣を思うなら、てめぇだけ残っておけば良かった話だろう。屋敷が落ちる前に、皆逃がすことだってできたはずだ」

「お方様は、切支丹だ! 自害できない。故に、仕方なくだ!」

「知ったことかよ。そんなこと、てめぇの都合だろうが。家臣よりもてめぇの始末を優先したことに変わりはない」

 少女が、打たれたように黙った。

「そういう土壇場で、人間性は出るもんだ。まぁお前があの女を崇めようと、俺には関係ないがな」

 馬鹿にしたように言う真砂の横で、清五郎が渋い顔をする。

「しかし、その関係ないことで遺恨を残すのは厄介だろ。この娘、真砂を仇と恨むぜ」
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