夜香花
「……ずっとここにいるわけにもいくまい。上に行けないのなら、一旦降りて他に行く」
深成の気持ちがよくわからず、真砂はあえてそこには触れずに、いつものように言う。
残った苦無を確かめ、袋にまとめる真砂に倣い、深成は懐剣だけ持って用意した。
ふと、真砂がその懐剣を見る。
「そうだ。それ、見せてみろ」
真砂に言われ、深成は素直に懐剣を手渡した。
真砂は鞘を咥え、払う。
「洗わないと、下手すると中子(なかご)が腐るぞ」
そう言って、ずい、と深成に刃を突き出す。
「水をかけて、丁寧に洗うんだ」
「え、う、うん」
真砂に持ってもらったまま、深成は刀身に水をかけながら、言われたとおり丁寧に刃を擦っていった。
真砂の血が流れていく。
一通り汚れを洗い流したところで、真砂はひょい、と刃を翳して、まじまじと刀身を眺めた。
「……まぁ、人を斬ったんだ。完璧に曇りは取れんな」
一番初めに使ったときのような、かすり傷ではない。
腕を一本斬り落としたのだから、人を斬ったのと同じぐらいの血を浴びた刃だ。
打ち粉もないし、洗っただけでは完全に綺麗には戻らない。
深成の気持ちがよくわからず、真砂はあえてそこには触れずに、いつものように言う。
残った苦無を確かめ、袋にまとめる真砂に倣い、深成は懐剣だけ持って用意した。
ふと、真砂がその懐剣を見る。
「そうだ。それ、見せてみろ」
真砂に言われ、深成は素直に懐剣を手渡した。
真砂は鞘を咥え、払う。
「洗わないと、下手すると中子(なかご)が腐るぞ」
そう言って、ずい、と深成に刃を突き出す。
「水をかけて、丁寧に洗うんだ」
「え、う、うん」
真砂に持ってもらったまま、深成は刀身に水をかけながら、言われたとおり丁寧に刃を擦っていった。
真砂の血が流れていく。
一通り汚れを洗い流したところで、真砂はひょい、と刃を翳して、まじまじと刀身を眺めた。
「……まぁ、人を斬ったんだ。完璧に曇りは取れんな」
一番初めに使ったときのような、かすり傷ではない。
腕を一本斬り落としたのだから、人を斬ったのと同じぐらいの血を浴びた刃だ。
打ち粉もないし、洗っただけでは完全に綺麗には戻らない。