夜香花
「ふん。だったら何だ。こんなガキに、何が出来る。敵にもならん」
先程抜いた脇差しを鞘にしまい、真砂は少女を一瞥した。
その途端、少女は、キッと真砂を睨んだ。
「出来るか出来ないかではない! やるかやらないかだ!」
叫びと共に、少女の姿が消える。
「何っ?」
清五郎はもちろん、真砂も目を見張った。
が、驚いたのは一瞬。
次の瞬間には、真砂は身体を反転させ、その勢いのまま、真後ろに迫った少女に、肘鉄を食らわせる。
もろに遠心力の乗った肘鉄を食らい、小さな少女は築地塀の向こうに吹っ飛んだ。
どさ、と地面に叩き付けられ、そのまま動かなくなる。
「……こいつ……」
ちょっと信じられない、という表情で、真砂は塀の下に落ちた少女を見た。
鼻血と涙と泥でぐちゃぐちゃの顔は、どう見ても十やそこらだ。
「死んだか?」
清五郎が、ちょい、と爪先で少女をつつく。
少女は眉間に皺を寄せ、小さく呻いた。
「どうする? 殺しておいたほうがいいかな」
「いや」
刀を抜こうとする清五郎を制し、真砂は少し面白そうに、少女のすぐ傍にしゃがみ込んだ。
「面白い。お前、俺が憎ければ、俺を殺しに来い」
薄目を開けた少女に言うと、真砂は踵を返した。
二人の乱破の姿は、あっという間に闇に溶け、後には道に転がる小さな少女だけが残された。
先程抜いた脇差しを鞘にしまい、真砂は少女を一瞥した。
その途端、少女は、キッと真砂を睨んだ。
「出来るか出来ないかではない! やるかやらないかだ!」
叫びと共に、少女の姿が消える。
「何っ?」
清五郎はもちろん、真砂も目を見張った。
が、驚いたのは一瞬。
次の瞬間には、真砂は身体を反転させ、その勢いのまま、真後ろに迫った少女に、肘鉄を食らわせる。
もろに遠心力の乗った肘鉄を食らい、小さな少女は築地塀の向こうに吹っ飛んだ。
どさ、と地面に叩き付けられ、そのまま動かなくなる。
「……こいつ……」
ちょっと信じられない、という表情で、真砂は塀の下に落ちた少女を見た。
鼻血と涙と泥でぐちゃぐちゃの顔は、どう見ても十やそこらだ。
「死んだか?」
清五郎が、ちょい、と爪先で少女をつつく。
少女は眉間に皺を寄せ、小さく呻いた。
「どうする? 殺しておいたほうがいいかな」
「いや」
刀を抜こうとする清五郎を制し、真砂は少し面白そうに、少女のすぐ傍にしゃがみ込んだ。
「面白い。お前、俺が憎ければ、俺を殺しに来い」
薄目を開けた少女に言うと、真砂は踵を返した。
二人の乱破の姿は、あっという間に闇に溶け、後には道に転がる小さな少女だけが残された。