夜香花
 皆から離れ、少し行った大木の下で、清五郎は振り返った。
 そして、まじまじと深成を見る。

「お前はずっと、真砂といたのか?」

 こくり、と深成は頷いた。
 清五郎は腕組みをして考え込む。

 深成が真砂の近くにいるのは、今に始まったことではない。
 今までだって、ずっと真砂とあったのだ。
 だからそのこと自体は、清五郎にとっては大したことではないのだが。

「真砂の、あの傷の手当ては?」

 止血をし、傷口を洗い、薬草を磨り潰し、それを塗って布を巻く。
 片手で出来ないこともないが、あれほど綺麗に布を巻けるだろうか。

「あれは、わらわが」

 清五郎の視線が動いた。
 予想通りといえばそうなのだが、やはり昔から真砂を知っているだけに、信じられないのだ。
 深成は、真砂が自分で傷口を焼いたことと、その後の看病は自分がやったことを話した。

「ふーん……。やはり、といえばそうだが。意外だな。使える者は使っただけ、か? いや……違うな」

 深成の話を聞いて、清五郎はぶつぶつと考えを巡らせている。
 深成にとっては意外なことに、清五郎はあまり深成に悪い印象は持っていないようだ。
 真砂の左腕を見たときは、落胆とも取れる態度を示したが、真砂がそれほどの怪我を負ったということが信じられなかっただけのようだ。
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