夜香花
「そ、そりゃあね、あんだけ大怪我したんだし、人がどうのとか、言ってる場合じゃないから当たり前といえば当たり前なんだけど。そいでもわらわはね、わらわが真砂の腕に水をかけて洗ったり、布を巻いたりするのを真砂が嫌がらないのが嬉しいっていうか。今までだったら、当たり前のように蹴り飛ばされてたことも、許してくれるようになったのかなぁって」

「ふぅん。……そうか、真砂が、ねぇ……」

 再び清五郎は考え込んだ。
 深成は大したことではないと言ったが、清五郎の記憶にある限り、真砂が治療のためとはいえ、大人しく人にされるがままになったことなどなかった。
 そもそも人に治療をされる、ということ自体がなかったのだ。

 それに何より。

「真砂が、お前の作った粥を食ったのか」

 それこそあり得ない。
 だが深成は、大きくこくりと頷いた。

「さすがに、食べさせられるのは拒否されたけど」

 嬉しそうに笑う。

「そうか……。あの真砂が……」

 唸るように言い、清五郎は深成を促した。

「なら、芋があるから持っていくといい」

「あ! うん。ありがとう!」

 嬉しそうに言う深成に、清五郎は笑みを浮かべた。
 普通に話してみると、深成が清五郎に抱いていた苦手意識も、あまり感じない。
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