夜香花
「真砂。苦無貸して」
涙を拳で拭いながら言う深成に、真砂は顔を向けた。
深成の手にある芋をちらりと見、黙ったまま腰から苦無を一本取り出し、深成に渡す。
受け取った苦無で、深成が芋を刻み始めると、捨吉は安心したように、真砂に一礼して去っていった。
傍(はた)から見たら、妙な三人が残された。
泣きながら芋を刻む深成と、茫然とその様子を眺める千代。
その二人を全く気にする風もない真砂。
深成は一通り刻んだ芋や山菜を火にかけた器に押し込め、キノコと水を入れると、別の器に薬草を入れた。
そしてそれを、ごりごりと磨り潰す。
「……あ。お水がなくなっちゃった。真砂、お水汲んでくる」
竹筒を振り、立ち上がった深成に、真砂は自分の傍に置いてあった竹筒も投げて寄越した。
竹筒一本では、すぐなくなってしまう。
傷を洗うにも、料理をするにも、もちろん飲む用にもいる。
あまり行ったり来たりしないでいいよう、それなりに汲めるようにしてくれたのだろう。
「……捨吉についていってもらえ」
深成は、きょろ、と辺りを見回し、少し考えた。
まだ戦から十日も経っていない。
そう里から離れたわけでもないので、残党がいたら危険だ。
万が一のために、一人でちょろちょろ出歩くな、ということだろう。
「わかった」
こくりと頷き、深成は皆が集まっているほうへと駆け出していった。
涙を拳で拭いながら言う深成に、真砂は顔を向けた。
深成の手にある芋をちらりと見、黙ったまま腰から苦無を一本取り出し、深成に渡す。
受け取った苦無で、深成が芋を刻み始めると、捨吉は安心したように、真砂に一礼して去っていった。
傍(はた)から見たら、妙な三人が残された。
泣きながら芋を刻む深成と、茫然とその様子を眺める千代。
その二人を全く気にする風もない真砂。
深成は一通り刻んだ芋や山菜を火にかけた器に押し込め、キノコと水を入れると、別の器に薬草を入れた。
そしてそれを、ごりごりと磨り潰す。
「……あ。お水がなくなっちゃった。真砂、お水汲んでくる」
竹筒を振り、立ち上がった深成に、真砂は自分の傍に置いてあった竹筒も投げて寄越した。
竹筒一本では、すぐなくなってしまう。
傷を洗うにも、料理をするにも、もちろん飲む用にもいる。
あまり行ったり来たりしないでいいよう、それなりに汲めるようにしてくれたのだろう。
「……捨吉についていってもらえ」
深成は、きょろ、と辺りを見回し、少し考えた。
まだ戦から十日も経っていない。
そう里から離れたわけでもないので、残党がいたら危険だ。
万が一のために、一人でちょろちょろ出歩くな、ということだろう。
「わかった」
こくりと頷き、深成は皆が集まっているほうへと駆け出していった。