夜香花
「大坂のお屋敷ではありません。今は九度山ですがね」
九度山。
真砂が言っていた通りだ。
深成は、きゅ、と拳を握りしめた。
「黙って行くのは……嫌だな。今回のことは、わらわが原因なんだし」
ぼそ、と言う深成に、男---六郎は、ぐるりと周りを見渡した。
「於市様が責任を感じることは、ありませぬが。そもそも忍びは、主を守るためにあるものです。於市様のために戦うことなど、当たり前のことですよ。小さな忍びの党など、どうなろうと気になさらないで良いものです」
「わらわ、そんな風には思えないよ! わらわは別に、ここの党の主じゃないもん! そんな上下関係なく、優しくしてくれたんだもんっ!」
いきなりな深成の剣幕に、少し六郎は驚いたようだ。
僅かに目を見開いて深成を見、その視線を横の捨吉に移す。
「深成は頭領に懐いてんだ。頭領だって、深成を大事にしてるよ。……とにかく、頭領のところに帰ろう」
捨吉が深成を促すと、すぐに頷いて、深成は彼の手を取った。
それに、また六郎は目を見張る。
六郎にとっては主家の姫君なので、このように普通に喋ることはおろか、容易く触れることも躊躇う深成なのに、身分もないような乱破の少年が、友達のように接している。
少し、六郎は羨ましく思った。
九度山。
真砂が言っていた通りだ。
深成は、きゅ、と拳を握りしめた。
「黙って行くのは……嫌だな。今回のことは、わらわが原因なんだし」
ぼそ、と言う深成に、男---六郎は、ぐるりと周りを見渡した。
「於市様が責任を感じることは、ありませぬが。そもそも忍びは、主を守るためにあるものです。於市様のために戦うことなど、当たり前のことですよ。小さな忍びの党など、どうなろうと気になさらないで良いものです」
「わらわ、そんな風には思えないよ! わらわは別に、ここの党の主じゃないもん! そんな上下関係なく、優しくしてくれたんだもんっ!」
いきなりな深成の剣幕に、少し六郎は驚いたようだ。
僅かに目を見開いて深成を見、その視線を横の捨吉に移す。
「深成は頭領に懐いてんだ。頭領だって、深成を大事にしてるよ。……とにかく、頭領のところに帰ろう」
捨吉が深成を促すと、すぐに頷いて、深成は彼の手を取った。
それに、また六郎は目を見張る。
六郎にとっては主家の姫君なので、このように普通に喋ることはおろか、容易く触れることも躊躇う深成なのに、身分もないような乱破の少年が、友達のように接している。
少し、六郎は羨ましく思った。