夜香花
「六郎……? 十勇士の一人か」
真砂が、六郎から視線を外さず言った。
放つ殺気は変わらない。
「こいつを、取り返しに来たのか」
「さすがに察しが良いな。弱小な忍びの党の若造と思ったが、少々甘く見ていたようだ」
真砂と六郎の間の空気が張り詰める。
その気に中(あ)てられていた深成だが、立てた膝に感じる真砂の左腕の僅かな重みに、我に返った。
解きかけていた布を取り、小さな器を桶に入れて水を汲む。
そして、真砂の傷口を丁寧に洗った。
「その傷。於市様を守ったが故の傷だとか? 乱破の頭領とも思えぬ傷だな」
どこまでも尊大に、六郎が言う。
だが真砂は特に反応しなかった。
代わりに捨吉が食って掛かる。
「おい! 部外者のくせに、いきなり入り込んできて、頭領に向かって何だよ!」
異変に気づいて集まってきた里の者たちも、ぐるりと六郎を取り囲む。
「頭領。何ですか、こいつ」
「入り込んだのは褒めてやるが、出るときもそう簡単にいくとは思うなよ」
皆、敵意を露わに六郎に迫る。
真砂が、六郎から視線を外さず言った。
放つ殺気は変わらない。
「こいつを、取り返しに来たのか」
「さすがに察しが良いな。弱小な忍びの党の若造と思ったが、少々甘く見ていたようだ」
真砂と六郎の間の空気が張り詰める。
その気に中(あ)てられていた深成だが、立てた膝に感じる真砂の左腕の僅かな重みに、我に返った。
解きかけていた布を取り、小さな器を桶に入れて水を汲む。
そして、真砂の傷口を丁寧に洗った。
「その傷。於市様を守ったが故の傷だとか? 乱破の頭領とも思えぬ傷だな」
どこまでも尊大に、六郎が言う。
だが真砂は特に反応しなかった。
代わりに捨吉が食って掛かる。
「おい! 部外者のくせに、いきなり入り込んできて、頭領に向かって何だよ!」
異変に気づいて集まってきた里の者たちも、ぐるりと六郎を取り囲む。
「頭領。何ですか、こいつ」
「入り込んだのは褒めてやるが、出るときもそう簡単にいくとは思うなよ」
皆、敵意を露わに六郎に迫る。