夜香花
「匿っていたわけではないがな……。まぁ後は好きにするがいい」
ひょい、と深成から腕を取り返して、真砂は素っ気なく言った。
何となく六郎を取り囲んでいた者らは、状況を察して、おのおの元の位置に戻っていった。
捨吉と、中の長老だけが、その場に残って成り行きを見守っている。
「とりあえずは、ほれ、飯時じゃて。お前さんも、九度山からなら長旅じゃ。腹を満たすがいい」
場を和ますように言い、中の長老は捨吉に、向こうで炊き出しをしている輪から夕餉を貰ってくるよう命じた。
ちらり、と六郎を見、少し口を尖らせた捨吉だったが、真砂に対する六郎の態度で少し気が収まったのか、大きな焚き火のほうに駆けていく。
深成は火にかけていた器の中身の味見をすると、器を洗って、そこに出来た芋汁を入れた。
「はい」
深成が差し出した器を、真砂が受け取る。
そのまま口を近づけて冷ます真砂に、中の長老は、ほぅ、と小さく呟いた。
やがて捨吉が、器を三つ運んできた。
「長老、どうぞ」
長老に手渡した後、六郎の前にも器を置く。
後の一つは自分の分だ。
「……於市様は?」
六郎の言葉に、深成は、目の前の小さな火の上の器を指す。
「真砂とわらわは、これでいいから」
ひょい、と深成から腕を取り返して、真砂は素っ気なく言った。
何となく六郎を取り囲んでいた者らは、状況を察して、おのおの元の位置に戻っていった。
捨吉と、中の長老だけが、その場に残って成り行きを見守っている。
「とりあえずは、ほれ、飯時じゃて。お前さんも、九度山からなら長旅じゃ。腹を満たすがいい」
場を和ますように言い、中の長老は捨吉に、向こうで炊き出しをしている輪から夕餉を貰ってくるよう命じた。
ちらり、と六郎を見、少し口を尖らせた捨吉だったが、真砂に対する六郎の態度で少し気が収まったのか、大きな焚き火のほうに駆けていく。
深成は火にかけていた器の中身の味見をすると、器を洗って、そこに出来た芋汁を入れた。
「はい」
深成が差し出した器を、真砂が受け取る。
そのまま口を近づけて冷ます真砂に、中の長老は、ほぅ、と小さく呟いた。
やがて捨吉が、器を三つ運んできた。
「長老、どうぞ」
長老に手渡した後、六郎の前にも器を置く。
後の一つは自分の分だ。
「……於市様は?」
六郎の言葉に、深成は、目の前の小さな火の上の器を指す。
「真砂とわらわは、これでいいから」