夜香花
長老は二人を微笑ましく見、次いで六郎の様子を窺うと、おもむろに口を開いた。
「怪我のほうは、快方に向かっておりましょう。したが、今後の生活に、少なからず支障が出ましょう」
利き手でなくても、腕が一本になると、かなり不便だ。
まして真砂には、共に暮らす者などいない。
長老は、六郎に目を向けた。
「お前さん、深成を迎えに来たと言ったな。それは、どうしても成さねばならない、殿からの命令か?」
六郎が、長老を見る。
「何か思惑があってのことか? ただ一応戦も落ち着いて、この間に家名を残しておきたいと思っただけのことか?」
「……何が言いたいのだ?」
訝しげに言う六郎に、長老は、ちょい、と真砂を指した。
「特に必要性がないのなら、深成はこのまま、ここに置いておくことは出来ぬものか、と言っておるのじゃ。頭領は、この通り。うちの頭領の世話を焼けるのは、深成だけなのじゃ。今深成がいなくなれば、頭領が困るじゃろう」
「そうだよ! 深成がいなくなったら、誰が頭領のお世話をするんだよ。深成は頭領には、必要な子なんだ!」
捨吉が声を上げる。
深成が照れ臭そうに、ぽりぽりと頬を掻いた。
「怪我のほうは、快方に向かっておりましょう。したが、今後の生活に、少なからず支障が出ましょう」
利き手でなくても、腕が一本になると、かなり不便だ。
まして真砂には、共に暮らす者などいない。
長老は、六郎に目を向けた。
「お前さん、深成を迎えに来たと言ったな。それは、どうしても成さねばならない、殿からの命令か?」
六郎が、長老を見る。
「何か思惑があってのことか? ただ一応戦も落ち着いて、この間に家名を残しておきたいと思っただけのことか?」
「……何が言いたいのだ?」
訝しげに言う六郎に、長老は、ちょい、と真砂を指した。
「特に必要性がないのなら、深成はこのまま、ここに置いておくことは出来ぬものか、と言っておるのじゃ。頭領は、この通り。うちの頭領の世話を焼けるのは、深成だけなのじゃ。今深成がいなくなれば、頭領が困るじゃろう」
「そうだよ! 深成がいなくなったら、誰が頭領のお世話をするんだよ。深成は頭領には、必要な子なんだ!」
捨吉が声を上げる。
深成が照れ臭そうに、ぽりぽりと頬を掻いた。