夜香花
「そかな……。でも確かに、わらわは真砂の傍にいたいな……」

 ちらり、と真砂の視線が動く。
 六郎はまた、微妙な表情になって考え込んだ。

 しん、とした空気に、小さな焚き火の爆ぜる音が響く。

「ねぇ六郎」

 沈黙がしばらく続いてから、ぽつりと深成が口を開いた。

「わらわのこと、教えてくれないかな」

 ここに残るにしろ去るにしろ、自分のことは、ちゃんと理解しておきたい。
 でないとどうするかも決められない。

 深成の今の気持ちは、ここに残りたいのだが、己の出自のせいで皆が危険な目に遭うのは避けたい。
 その辺をちゃんと理解しないと、今の単純な気持ちだけでここに残ることは出来ないと思い、深成は六郎を見つめた。

「わらわはほんとに、真田の娘なの? 何で深成の党の、頭領の名を名乗ってるの? わらわは何で、お屋敷から出されたの?」

 聞きたいことは山ほどある。
 深成の訴えに、六郎はちらりと真砂を見た。

 焚き火の火に照らされた整った顔には、何の感情も表れていない。
 六郎はため息をつき、深成に向き直った。
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