夜香花
「そ、それこそ信用のない者に、そんな報酬を払ってまで要人の暗殺など頼むものか。下手に指令を出せば、己の首を絞めることになりかねん」

「それは、党としての信用があるのさ。事を成す人間のことは知らんでも、頼んだことは確実にこなす。そういう党がある、ということを知っている者が、連絡係を通じて俺たちに依頼するのさ。いわば俺たちは、完全に影の存在だ。雇い主の前にも、一切姿は現さない」

 確かにこのような乱破の存在、今の今まで知らなかった。
 なので単なる弱小な忍びの集まりかと思っていたが、そうではない。

 完全に表舞台に姿を現さず、かつ依頼された仕事は確実にこなす。
 それは一流である証拠だ。

「俺たちは主がない。故に、どこからどういう指令が出ても、従えるわけだ」

 ごくり、と六郎は喉を鳴らした。
 それは、指令さえあれば、どんな者でも即座に闇に葬ることが可能ということだ。

 そして、それだけの腕もある。
 どんな者でも仕留める非情さもあるわけだ。

 ある意味、有名な忍びの党よりも恐ろしい存在だ。

「まぁそういうわけなんで、お前さんが危惧するようなことは何もない、ということじゃ」

 穏やかに言う長老に、六郎はなおも考えた。
 しばらくして、息を吐く。

「まぁ……そうかもしれんな。それに、於市様の恩があるのは確かだ」

 事実はどうあれ、今回の戦から深成を守り、面倒を見てきたのは、この党なのだ。
 六郎は話を再開した。
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