夜香花
 夜が、白々と明けようとしている。
 真砂は窓に目をやった。

 情報収集に使っている鳥が、軒先の巣穴に帰ってきたようだ。
 小さく口笛を吹き、鳥を呼ぶ。
 窓の簾の隙間から飛び込んできた鳥の足には、小さな紙が括り付けられていた。

「……正室の暗殺?」

 これはまた、物騒な依頼だ。
 が、こういうほうが、真砂にとっては簡単である。

 ちまちまとした諜報活動のほうがやりにくい。
 もっとも暗殺にしても、それなりの下調べはいるものだが。

 真砂が腰を上げかけるのと同時に、戸口に人の気配がした。
 すぐに、外から声がかかる。

「頭領。依頼です」

「城主の室、暗殺か?」

 内心舌打ちしつつ、真砂はその場に座り直した。
 同時に戸口から清五郎が入ってくる。
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