夜香花
「な、何だと?!」
真剣な態度に対してこのようなことを言われ、六郎はいきり立った。
が、真砂はうるさそうに、ひらひらと手を振る。
「お前はこいつに構い過ぎだ。こいつだって、もうガキでもないだろ。てめぇのことぐらい、てめぇで決める。お前がそこまで心配することはない」
「於市様の心はわかっている! それがしは、お主の心を聞いているのだ!」
眉間の皺はそのままに、真砂は六郎を睨んだ。
口はへの字に曲がっている。
捨吉が、密かに後ろで笑いを噛み殺した。
真砂の性格からいって、このような他人の前で、己の気持ちを自ら告白するなど、絶対にしないだろう。
今まで自分的には縁のなかった、色恋絡みなのだ。
だが今の六郎の勢いからすると、真砂の誓いなくして大人しく引き下がることはないような。
---頭領、内心困ってるだろうな。どうするんだろう---
吹き出したいのを必死で堪えながら、捨吉は真砂の後ろ姿を見つめた。
しばらく六郎と睨み合った後、真砂は乱暴に、深成の腕を掴んで足を踏み出した。
「待たぬか! まだ答えを聞いておらぬ!」
そのまま横をすり抜けようとした真砂に、六郎が食ってかかる。
肩を掴もうと伸びた六郎の手を、真砂は身体を捻って避けた。
そして、足を止めずに、キッと六郎を睨み付けた。
「そんなこと、言われんでもわかるだろう! この俺が、何とも想ってない女一人のために、わざわざこんなところまで出張ってくると思うのか!」
真剣な態度に対してこのようなことを言われ、六郎はいきり立った。
が、真砂はうるさそうに、ひらひらと手を振る。
「お前はこいつに構い過ぎだ。こいつだって、もうガキでもないだろ。てめぇのことぐらい、てめぇで決める。お前がそこまで心配することはない」
「於市様の心はわかっている! それがしは、お主の心を聞いているのだ!」
眉間の皺はそのままに、真砂は六郎を睨んだ。
口はへの字に曲がっている。
捨吉が、密かに後ろで笑いを噛み殺した。
真砂の性格からいって、このような他人の前で、己の気持ちを自ら告白するなど、絶対にしないだろう。
今まで自分的には縁のなかった、色恋絡みなのだ。
だが今の六郎の勢いからすると、真砂の誓いなくして大人しく引き下がることはないような。
---頭領、内心困ってるだろうな。どうするんだろう---
吹き出したいのを必死で堪えながら、捨吉は真砂の後ろ姿を見つめた。
しばらく六郎と睨み合った後、真砂は乱暴に、深成の腕を掴んで足を踏み出した。
「待たぬか! まだ答えを聞いておらぬ!」
そのまま横をすり抜けようとした真砂に、六郎が食ってかかる。
肩を掴もうと伸びた六郎の手を、真砂は身体を捻って避けた。
そして、足を止めずに、キッと六郎を睨み付けた。
「そんなこと、言われんでもわかるだろう! この俺が、何とも想ってない女一人のために、わざわざこんなところまで出張ってくると思うのか!」