夜香花
思わず真砂に見惚れていた深成に、真砂が思いきり身体を倒して、抱き付く形を取った。
引っ付いてしまえば、着物が少々乱れたところで見えない、と思い、少し安心した深成だったが、いきなりびくんと身体を震わせた。
真砂の右手が、深成の着物の合わせから、するりと中へ滑り込んだのだ。
「〜〜っ……」
深成も、それなりの歳である。
まして近く、婚儀も控えていた。
三年前はよくわからなかった、こういうことの知識も付いているのだ。
しかも、どこかぼんやりとしたまま、会ったこともない男に抱かれるのと、ずっと会いたかった大好きな男に抱かれるのとでは、わけが違う。
身体は固まってしまっているが、鼓動だけが真砂にも伝わるぐらい、うるさく暴れている。
どうしていいものかわからず、深成はただ、視線を怪しく彷徨わせた。
「……大人しいじゃないか」
不意に聞こえた低い声に我に返れば、真砂が身体を起こして深成を見ている。
「こんな恥ずかしいこと出来ないとか、喚いてなかったか?」
「だ、だって、真砂だもん」
少しだけ、真砂が訝しげな顔をした。
「そりゃ恥ずかしいけどっ。で、でも好きな人相手だし。こういうことって、好きな人とするもんでしょっ」
自分の身体の下で、わたわたと言う深成に、真砂は僅かに口角を上げた。
だがすぐに、ぷい、と横を向く。
「とか言うわりに、知らん男のところへ行こうとしてたじゃないか。あいつでも良かったのか? 嫁げば当然、夫となる男に抱かれるぜ」
「……わらわの心は三年間、ここになかったもの」
とん、と深成は、はだけた胸に手を置く。
引っ付いてしまえば、着物が少々乱れたところで見えない、と思い、少し安心した深成だったが、いきなりびくんと身体を震わせた。
真砂の右手が、深成の着物の合わせから、するりと中へ滑り込んだのだ。
「〜〜っ……」
深成も、それなりの歳である。
まして近く、婚儀も控えていた。
三年前はよくわからなかった、こういうことの知識も付いているのだ。
しかも、どこかぼんやりとしたまま、会ったこともない男に抱かれるのと、ずっと会いたかった大好きな男に抱かれるのとでは、わけが違う。
身体は固まってしまっているが、鼓動だけが真砂にも伝わるぐらい、うるさく暴れている。
どうしていいものかわからず、深成はただ、視線を怪しく彷徨わせた。
「……大人しいじゃないか」
不意に聞こえた低い声に我に返れば、真砂が身体を起こして深成を見ている。
「こんな恥ずかしいこと出来ないとか、喚いてなかったか?」
「だ、だって、真砂だもん」
少しだけ、真砂が訝しげな顔をした。
「そりゃ恥ずかしいけどっ。で、でも好きな人相手だし。こういうことって、好きな人とするもんでしょっ」
自分の身体の下で、わたわたと言う深成に、真砂は僅かに口角を上げた。
だがすぐに、ぷい、と横を向く。
「とか言うわりに、知らん男のところへ行こうとしてたじゃないか。あいつでも良かったのか? 嫁げば当然、夫となる男に抱かれるぜ」
「……わらわの心は三年間、ここになかったもの」
とん、と深成は、はだけた胸に手を置く。