夜香花
「もしさ、あのとき、わらわが真砂のほうへ行かなかったらどうした?」
少し、真砂の眉が寄る。
「真砂が迎えに来てくれたとき、別に何の約束もしてなかったじゃん。わらわの気持ちだって、わかんないでしょ。もしかしたら、わらわは小十郎様のところに行くのを、楽しみにしてたかもしれないよ?」
「そうかな?」
「真砂だって、来いって言っただけじゃん。迎えに来たって、言ってくれればいいのに」
「来いっつったら来るだろ」
「何でよ。わらわ、真砂よりも小十郎様を取るかもしれないじゃん。やだって言うかもよ?」
少し頬を膨らます深成に、真砂はにやりと口角を上げた。
そして、ぎゅ、と深成を抱き締める。
「そんなこと、言わすかよ」
「わらわが逃げたらどうするの。わらわの気持ちが真砂にあるって、自信があったの?」
「さぁな。でも、そんなことはどうでもいい。俺がお前を欲した。それが全てだ」
つまり、自分が深成を欲しくなったから、奪いに行ったということだ。
例え深成の気持ちが真砂になくても関係ない。
そのときは、力づくで奪うのだろう。
「怖いなぁ」
そう言いながらも、深成は嬉しそうに、真砂に抱きつく。
この真砂に、これほど愛されている幸せを、深成は真砂の腕の中で、しみじみと噛み締めるのだった。
*****おしまい*****
少し、真砂の眉が寄る。
「真砂が迎えに来てくれたとき、別に何の約束もしてなかったじゃん。わらわの気持ちだって、わかんないでしょ。もしかしたら、わらわは小十郎様のところに行くのを、楽しみにしてたかもしれないよ?」
「そうかな?」
「真砂だって、来いって言っただけじゃん。迎えに来たって、言ってくれればいいのに」
「来いっつったら来るだろ」
「何でよ。わらわ、真砂よりも小十郎様を取るかもしれないじゃん。やだって言うかもよ?」
少し頬を膨らます深成に、真砂はにやりと口角を上げた。
そして、ぎゅ、と深成を抱き締める。
「そんなこと、言わすかよ」
「わらわが逃げたらどうするの。わらわの気持ちが真砂にあるって、自信があったの?」
「さぁな。でも、そんなことはどうでもいい。俺がお前を欲した。それが全てだ」
つまり、自分が深成を欲しくなったから、奪いに行ったということだ。
例え深成の気持ちが真砂になくても関係ない。
そのときは、力づくで奪うのだろう。
「怖いなぁ」
そう言いながらも、深成は嬉しそうに、真砂に抱きつく。
この真砂に、これほど愛されている幸せを、深成は真砂の腕の中で、しみじみと噛み締めるのだった。
*****おしまい*****