夜香花
第五章
それからさらに二日ほど、そのままの状態が続いた。
空腹に耐えかね、目の前の芋に齧り付いてみたが、生の芋など弱った胃で食えるものではない。
すっかり衰弱した深成は、ただ真砂の家の隅で、ぼろ切れのように転がっていた。
そんなある日。
真砂は深成を担いで家を出た。
拘束していた縄は切ったが、手首に巻き付いたままだ。
真砂の肩の上で、深成はぴくりとも動かない。
里から少し離れたところを流れる川まで来ると、真砂は無造作に、担いでいた深成を、水へ投げ込んだ。
そして自分の帯を解くと、着物を脱いで、同じように飛び込む。
この辺りは、流れは穏やかだ。
少し先まで泳ぎ、真砂は河原の岩に上がった。
意識も怪しいまま、水に放り込まれた深成は、浮きつ沈みつしながら、ゆっくりと近づいてくる。
真砂の傍で、ぶくっと沈んだ深成が、いきなり激しく動いた。
必死で水を掻き、がばっと顔を上げる。
「うっ……がぼっ」
水に入れられたことで覚醒したのだろうが、弱り切った身体だ。
弱々しく水を掻きながら、溺れている。
真砂は、にやりと口角を上げた。
そして立ち上がると、もう一度水に飛び込んで、少し先まで泳いでいった。
空腹に耐えかね、目の前の芋に齧り付いてみたが、生の芋など弱った胃で食えるものではない。
すっかり衰弱した深成は、ただ真砂の家の隅で、ぼろ切れのように転がっていた。
そんなある日。
真砂は深成を担いで家を出た。
拘束していた縄は切ったが、手首に巻き付いたままだ。
真砂の肩の上で、深成はぴくりとも動かない。
里から少し離れたところを流れる川まで来ると、真砂は無造作に、担いでいた深成を、水へ投げ込んだ。
そして自分の帯を解くと、着物を脱いで、同じように飛び込む。
この辺りは、流れは穏やかだ。
少し先まで泳ぎ、真砂は河原の岩に上がった。
意識も怪しいまま、水に放り込まれた深成は、浮きつ沈みつしながら、ゆっくりと近づいてくる。
真砂の傍で、ぶくっと沈んだ深成が、いきなり激しく動いた。
必死で水を掻き、がばっと顔を上げる。
「うっ……がぼっ」
水に入れられたことで覚醒したのだろうが、弱り切った身体だ。
弱々しく水を掻きながら、溺れている。
真砂は、にやりと口角を上げた。
そして立ち上がると、もう一度水に飛び込んで、少し先まで泳いでいった。