夜香花
川に捨てられた自分が、無事に上がってきたことを知れば、また川に放り込まれるかもしれない。
が、今更逃げる元気もない。
火を挟んで、真砂と深成は向かい合った。
もっとも深成は、河原に転がった状態だが。
「やはりお前、並みの人間ではないな」
ぽつりと、真砂が口を開いた。
「もう何日も、何も食ってない。そんな状態で川に放り込まれりゃ、普通の奴ならお陀仏だぜ」
深成は黙っている。
今は喋る元気もない。
しばらく沈黙が続き、ややあって、真砂が動く気配がした。
干していた着物の状態を見ているようだ。
深成は目だけを動かして、真砂を見た。
濡れた身体は乱破らしく、引き締まっている。
ふと、真砂の腰の辺りに、小さな印が彫られているのに気づいた。
あれが、以前清五郎とかいう男に捜された、忍びの印だろうか。
---あんな印、わらわにはない……---
倒れたまま、じっと見ていると、真砂は着物を羽織り、振り向いた。
が、今更逃げる元気もない。
火を挟んで、真砂と深成は向かい合った。
もっとも深成は、河原に転がった状態だが。
「やはりお前、並みの人間ではないな」
ぽつりと、真砂が口を開いた。
「もう何日も、何も食ってない。そんな状態で川に放り込まれりゃ、普通の奴ならお陀仏だぜ」
深成は黙っている。
今は喋る元気もない。
しばらく沈黙が続き、ややあって、真砂が動く気配がした。
干していた着物の状態を見ているようだ。
深成は目だけを動かして、真砂を見た。
濡れた身体は乱破らしく、引き締まっている。
ふと、真砂の腰の辺りに、小さな印が彫られているのに気づいた。
あれが、以前清五郎とかいう男に捜された、忍びの印だろうか。
---あんな印、わらわにはない……---
倒れたまま、じっと見ていると、真砂は着物を羽織り、振り向いた。