夜香花
「真砂様。あの娘、始末したのですか?」

 真砂の胸に手を這わせながら、千代が言う。
 あれ以来、毎晩のように千代は真砂の元へとやってくる。

 別段千代は、真砂と特別な関係などではない。
 里の娘は、基本的に里の男のものだ。

 誰かと正式に所帯を持てば別だが、それまでは、誰と身体の関係を持とうと自由である。
 それで子を身籠もると、娘の元で育てる。

 元々乱破の女子は孕みにくいのだ。
 女ならではの、身体を使った戦法を使うため、簡単には子が出来ない身体になってしまうようだ。

 故に、誰の子かわからなくても、子は大事にされる。
 女子に激しく拒否されない限り、男は誰にでも手を付けることが出来るのだ。

「始末するまでもない。放っておきゃ、死んだだろうさ」

「? 殺してはいない……ということですか?」

 訝しそうに言う千代を押し倒し、真砂はすでに露わになっている千代の乳房を、乱暴に掴んだ。
 千代が、小さく息を呑み、身体を仰け反らせる。

 うるさい女子は好きではない。
 真砂が手を動かせば、千代は先までの話など簡単に頭から吹っ飛んでしまう。

 荒い息を吐きながら、愉悦の表情であえぐ千代の上で、真砂は闇に神経を張り巡らせた。
 僅かな殺気が感じられる。
 真砂の口角が、少し上がった。
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