夜香花
 真砂は千代の足を広げると同時に、己の身体を足の間に割り込ませた。

「あっ……真砂様……」

 抱きついてくる千代を払いのけ、真砂は片手で千代の両手首を掴んだ。
 そのまま千代の頭の上の床に押しつける。

「ま、真砂様……。この格好では、真砂様のお支度が……」

 両手を拘束されて、千代は少し身を捩った。
 真砂はまだ、着物を脱いでいない。
 合わせは大きく開いているが、帯も解いてない状態だ。

「足で解いてみな」

 面白そうに言う真砂に、千代はどきりとする。
 どんなときでも、真砂が笑うことはない。

 だが、どこか楽しそうな表情に、千代は嬉しくなって足を持ち上げた。
 真砂の身体が千代の足の間にあるため、千代は思いきり足を開かねば、真砂の帯には届かない。
 この上もなく恥ずかしい体勢だが、千代は嬉々として従う。

「……んっ……」

 千代が懸命に足先で真砂の帯を解こうとしている間、真砂は殺気の元を探っていた。
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