夜香花
「お前は何故、俺を狙う?」
ぽつりと真砂が口を開いた。
深成は一瞬きょとんとしたが、すぐにギッと真砂を睨む。
「お前がお方様を殺したからだ」
まさか、忘れたのだろうか、と思いながら、きっぱりと言う深成に、真砂は目を向ける。
「お前はただの捨て子だろう。何も室に育てられたわけでもあるまい。室の元で働いていただけだろう? それだけで、何故そんなに義理を立てるのだ」
「……」
「お前、自分の存在に、疑問を持たないか?」
「疑問?」
きょとんと、深成が真砂を見る。
「お前は自分のことを、『わらわ』というな。何故だ?」
ますますきょとんと、深成は首を傾げる。
ついさっきまで命のやり取りをしていた(と思っているのは深成だけかもしれないが)とは思えないほど静かに言うと、真砂はいきなり背を向けた。
「ま、待て!」
深成が慌てて後を追う。
「敵に背を向けるとは何事だぁっ」
叫び様、深成は地を蹴って真砂の背中に飛びかかった。
両腕を真砂の首に巻き付けようとするが、その手を取られ、そのまま真砂の頭の上を一回転して、地面に叩き付けられる。
息が詰まり、深成は仰向けで転がったまま、激痛に耐えた。
「お前はなかなか面白い奴だ。これからも、遠慮無く殺しに来るがいい」
涙を滲ませて呻く深成を見下ろし、真砂は楽しそうに言った。
ぽつりと真砂が口を開いた。
深成は一瞬きょとんとしたが、すぐにギッと真砂を睨む。
「お前がお方様を殺したからだ」
まさか、忘れたのだろうか、と思いながら、きっぱりと言う深成に、真砂は目を向ける。
「お前はただの捨て子だろう。何も室に育てられたわけでもあるまい。室の元で働いていただけだろう? それだけで、何故そんなに義理を立てるのだ」
「……」
「お前、自分の存在に、疑問を持たないか?」
「疑問?」
きょとんと、深成が真砂を見る。
「お前は自分のことを、『わらわ』というな。何故だ?」
ますますきょとんと、深成は首を傾げる。
ついさっきまで命のやり取りをしていた(と思っているのは深成だけかもしれないが)とは思えないほど静かに言うと、真砂はいきなり背を向けた。
「ま、待て!」
深成が慌てて後を追う。
「敵に背を向けるとは何事だぁっ」
叫び様、深成は地を蹴って真砂の背中に飛びかかった。
両腕を真砂の首に巻き付けようとするが、その手を取られ、そのまま真砂の頭の上を一回転して、地面に叩き付けられる。
息が詰まり、深成は仰向けで転がったまま、激痛に耐えた。
「お前はなかなか面白い奴だ。これからも、遠慮無く殺しに来るがいい」
涙を滲ませて呻く深成を見下ろし、真砂は楽しそうに言った。