夜香花
「にゃーーーっ!!」
再び深成が叫び声を上げた。
それとほぼ同時に、深成はほとんど無意識に、目の端に映ったものを引き寄せ、盾にした。
「っ!!」
千代の、息を呑む音が聞こえる。
同時に、千代が後ろに吹っ飛んだ。
柱に背を打ち付け、千代は崩れ落ちた。
深成が恐る恐る目を開けると、目の前には真砂の腕。
己が握っているのは、真砂の着物の袖だ。
深成が盾にするために引っ張ったのは、真砂の腕だったらしい。
深成に引っ張られ、少し上体を倒す格好で、真砂は無表情に、先で倒れる千代を見た。
そして、視線を落とすと、いまだ真砂の袖を握りしめて転がっている深成を振り払う。
「……う……」
千代が呻いて、上体を起こした。
その途端、鼻から血がぼたぼたと落ちる。
「お前、俺に刃を向けるとは、良い度胸だな」
冷たく言う真砂に、千代は縋るような目を向ける。
「そ、そんな! わたくしが、そのようなことっ! その娘が……」
鼻血で汚れた顔のまま、千代は必死で弁解する。
が、真砂は顎で入り口を指した。
「失せろ」
再び深成が叫び声を上げた。
それとほぼ同時に、深成はほとんど無意識に、目の端に映ったものを引き寄せ、盾にした。
「っ!!」
千代の、息を呑む音が聞こえる。
同時に、千代が後ろに吹っ飛んだ。
柱に背を打ち付け、千代は崩れ落ちた。
深成が恐る恐る目を開けると、目の前には真砂の腕。
己が握っているのは、真砂の着物の袖だ。
深成が盾にするために引っ張ったのは、真砂の腕だったらしい。
深成に引っ張られ、少し上体を倒す格好で、真砂は無表情に、先で倒れる千代を見た。
そして、視線を落とすと、いまだ真砂の袖を握りしめて転がっている深成を振り払う。
「……う……」
千代が呻いて、上体を起こした。
その途端、鼻から血がぼたぼたと落ちる。
「お前、俺に刃を向けるとは、良い度胸だな」
冷たく言う真砂に、千代は縋るような目を向ける。
「そ、そんな! わたくしが、そのようなことっ! その娘が……」
鼻血で汚れた顔のまま、千代は必死で弁解する。
が、真砂は顎で入り口を指した。
「失せろ」