夜香花
「お前、誰に育てられた」

 深成は床に転がったまま、じっと真砂を見た。
 しばらくしてから、ぽつりと呟く。

「そんなこと、何で知りたいの」

「……興味があるからさ。そうでないなら、お前なんざ、とっとと殺している」

「じゃあ、わらわのことがわかったら、もう興味はなくなって、殺しちゃうんじゃないの」

「どうかな。それはお前次第……」

 ふふ、と笑い、真砂は壁に背を預けた。

「お前は赤目の忍びの一党だろう。小さな党の、頭……の娘ってところか? 確かお前の名を継ぐ党があったはずだ。随分前に滅んだ党と思っていたが、一族は細々と続いていたのかな。けどお前のような小娘に『深成』の名を継がすとは、もう党自体が随分小さい……それこそお前が最後ぐらいなものだろう。だから、お前はあの室の元へとやられたのか? けど、完全に室の元へと入ったわけでもないってのは、どう考えてもおかしい。何か理由があったはずだ」

 そこまで言って、ふと真砂は深成を見た。
 その途端、僅かに眉間に皺が寄る。

 床に転がった深成の目は閉じられ、口からはすやすやと、寝息が漏れている。
 心底呆れ、真砂は目の前で寝息を立てる深成を見つめた。

「……ほんっとに、わからない……」

 小さく呟き、真砂は蝋燭に息を吹きかけた。
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