夜香花
真砂は、ついと頭上を見上げた。
手頃な木が生い茂っている。
それを横目で見つつ、さらに歩く。
まだ昼にもならない。
いかに容易い依頼だとて、油断は禁物だ。
いつでも細心の注意を払う。
そうやって、今まで生きてきた。
一通り屋敷の周りを見た後、真砂はそのまま、屋敷に背を向けた。
何も今すぐ乗り込むこともあるまい。
清五郎らが先に乗り込んでも、それはそれで構わない。
元々己の動きも考えも、誰にも言っていないのだ。
家を出るときに、こっそり出てきたわけではないので、里の者は真砂が出かけたことぐらいは気づいておろうが、それは別に隠すことでもないからだ。
ぶらぶらと歩き、屋敷からは相当離れた茶屋で、真砂は腰を下ろした。
すぐに店の者と思われる男が、茶を運んでくる。
「頭領。屋敷内は、怪しいほど人少なで」
湯飲みを渡しながら、男は小声で言う。
真砂は何も言わず、湯飲みを受け取った。
「誘いかもしれませぬ」
「構わぬ。誘いだとて、我らを討ったところで何になる」
「報賞が惜しくなったのやも」
手頃な木が生い茂っている。
それを横目で見つつ、さらに歩く。
まだ昼にもならない。
いかに容易い依頼だとて、油断は禁物だ。
いつでも細心の注意を払う。
そうやって、今まで生きてきた。
一通り屋敷の周りを見た後、真砂はそのまま、屋敷に背を向けた。
何も今すぐ乗り込むこともあるまい。
清五郎らが先に乗り込んでも、それはそれで構わない。
元々己の動きも考えも、誰にも言っていないのだ。
家を出るときに、こっそり出てきたわけではないので、里の者は真砂が出かけたことぐらいは気づいておろうが、それは別に隠すことでもないからだ。
ぶらぶらと歩き、屋敷からは相当離れた茶屋で、真砂は腰を下ろした。
すぐに店の者と思われる男が、茶を運んでくる。
「頭領。屋敷内は、怪しいほど人少なで」
湯飲みを渡しながら、男は小声で言う。
真砂は何も言わず、湯飲みを受け取った。
「誘いかもしれませぬ」
「構わぬ。誘いだとて、我らを討ったところで何になる」
「報賞が惜しくなったのやも」