夜香花
第六章
「すみません、頭領」

 里の中心の広場で、捨吉と羽月がひれ伏している。
 一体この二人に深成のことを調べろと命じたのは、いつのことだったか。

 随分しおれた格好で帰ってきた二人は、真砂の姿を見るなり、地に這いつくばった。
 小さく震えながら、ひたすら謝る。

「あの屋敷もくまなく調べたし、伊賀のほうにも足を伸ばして、徹底的に調べたんですが……。何分あの辺り、例の焼き討ちに遭ってから、伊賀者はいなくなりましたし、これといった手がかりもなくて」

「諜報活動もろくに出来ないのか? そんなことじゃ、頭領の役に立つなんて夢のまた夢だぞ」

 二人の前に座っている清五郎が、静かに言う。

「で、でも。一体何が気になるんで? 調べたところ、伊賀の里は焼け野原だったし、それから党の者が帰ってきたって話もなかった。何名かは南のほうに落ち延びたって話でしたが、それだって知れたもんだ。大方あの辺りの忍びは、滅んでます」

 必死で申し開きをする捨吉だが、清五郎の表情は変わらない。
 そもそも捨吉も羽月も、真砂に報告しているのだが、当の真砂は清五郎の後ろの木にもたれかかって俯いている。
 聞いているのかいないのか、先程から一言も発しないばかりか、二人を見もしないのだが、二人は必死だ。

 むしろ、真砂が顔を上げたほうが恐ろしい。
 清五郎も優しいわけではないが、真砂よりはまだマシなのだ。
 故に、二人はもっぱら清五郎を通して真砂に報告する形となる。
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