夜香花
「にゃんっ」
考え事に耽っていた深成は、不意に何かに躓いた。
元々後ろ首を掴まれた、不安定な体勢だ。
深成は顔から地面に突っ込みそうになる。
「おっと」
「ぐえっ」
真砂が素早く、首を掴んでいた手を引いた。
お陰で顔面から地面に突っ込むことは免れたが、瞬間的に首が絞まる。
蛙が潰れたような声を出し、深成は目を白黒させた。
「もーーーちょっと優しくできないのっ」
涙目で深成が叫ぶ。
今しがた、真砂には全く優しさがない、とつくづく思ったところだということも忘れ、深成は伸び上がって真砂に顔を近づけた。
「こけるところを助けてやったんだ。十分優しいじゃないか」
「どこがっ! どうせ転んだら、引き起こすのが面倒だから、とかいう理由でしょっ」
立てた人差し指を真砂に突きつけて、さらに顔も突き出す深成に、真砂はにやりと笑みを浮かべた。
「よくわかったな。ここ数日で、随分俺のことがわかってきたじゃないか」
「そりゃあ、ずーっと観察してるもんっ。油断してたら、そのうち寝首かかれるんだからねーっ」
「……褒めてない」
ふんぞり返る深成に冷めた目を向け、真砂はくるりと背を向けた。
そのときになって初めて、真砂が手を離していることに気づく。
が、深成は真砂の後を追った。
そのまま真砂は、自分の家に入っていく。
深成は後について行きながら、真砂の家をしげしげと見た。
考え事に耽っていた深成は、不意に何かに躓いた。
元々後ろ首を掴まれた、不安定な体勢だ。
深成は顔から地面に突っ込みそうになる。
「おっと」
「ぐえっ」
真砂が素早く、首を掴んでいた手を引いた。
お陰で顔面から地面に突っ込むことは免れたが、瞬間的に首が絞まる。
蛙が潰れたような声を出し、深成は目を白黒させた。
「もーーーちょっと優しくできないのっ」
涙目で深成が叫ぶ。
今しがた、真砂には全く優しさがない、とつくづく思ったところだということも忘れ、深成は伸び上がって真砂に顔を近づけた。
「こけるところを助けてやったんだ。十分優しいじゃないか」
「どこがっ! どうせ転んだら、引き起こすのが面倒だから、とかいう理由でしょっ」
立てた人差し指を真砂に突きつけて、さらに顔も突き出す深成に、真砂はにやりと笑みを浮かべた。
「よくわかったな。ここ数日で、随分俺のことがわかってきたじゃないか」
「そりゃあ、ずーっと観察してるもんっ。油断してたら、そのうち寝首かかれるんだからねーっ」
「……褒めてない」
ふんぞり返る深成に冷めた目を向け、真砂はくるりと背を向けた。
そのときになって初めて、真砂が手を離していることに気づく。
が、深成は真砂の後を追った。
そのまま真砂は、自分の家に入っていく。
深成は後について行きながら、真砂の家をしげしげと見た。