たまごのような恋 殻を割ったそのとき
「おかえり」

 そういってドアを手で押さえてくれていたのが私の兄で、大学生の誠一(せいいち)。

「ただいま。ここ最近ずっと雨が降っているね」
「そうだな」

 私は高校生になってからすぐに兄と二人暮しをしている。両親は共働きで家に帰ることはあまりないので、高校入学が決まったと同時にお兄ちゃんと暮らしたいと両親に言った。兄は高校生のころから一人暮らしをしていた。 一緒に住むということで文句を言われるかと思ったけど、あっさりOKしてくれた。

「琴音、肩が濡れているぞ、タオルで拭け」

 兄は私に黄色い花模様のタオルを投げた。それを受け取り、肩だけでなく,スカートや鞄なども拭いた。

「ほんと、すごい雨だな」

 これを言ったのは兄ではなく、兄の高校からの友達である辻本支樹(つじもとしき)だった。彼は兄が一人暮らしをしてからしょっちゅう遊びに来ている。

「誠一、あとレポート、どれくらいだ?」
「ん?あぁ、あとちょっとで終わる・・・・・・」
「そっか、俺はあともう少し。お前がやってくれるのか?はい」

 支樹が笑って、レポート用紙を渡してきた。

「私、これから料理を作るのですけど・・・・・・」
「冗談だよ」
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